人と動物実験のギャップをつなぐ卵殻膜研究 ― ?Hラベル体内動態解析とIBDモデルによる腸内細菌バランス改善機序の解明 ―

人と動物実験のギャップをつなぐ卵殻膜研究
― ?Hラベル体内動態解析とIBDモデルによる腸内細菌バランス改善機序の解明 ―

 国立大学法人中国竞彩网大学院工学府の清水美穂客員准教授、跡見順子客員教授(当時)、同大学大学院工学研究院応用化学部門の渡邊敏行教授らは、卵殻膜の主要タンパク質をプロテオミクス解析によりリゾチームと同定し、動物実験とヒト臨床試験を体重あたり同一投与量で比較することで両者に共通する有効性を初めて明らかにしました。これまでに知られていなかった複合天然素材をトリチウムラベルし、体内動態を簡便に解析できる手法を開発し、この成果により、今後、卵殻膜を活用した新しい機能性食品や医療補助食品の開発が期待されます。

本研究成果は、International Journal of Molecular Sciences 特集号:正常組織修復と線維化における細胞メカニズムとシグナル伝達経路(MDPI社、オンライン版、2025年9月18日付)に掲載されました。
論文タイトル:Pharmacokinetic Profiling Using ?H-Labeled Eggshell Membrane and Effects of Eggshell Membrane and Lysozyme Oral Supplementation on DSS-Induced Colitis and Human Gut Microbiota
URL:https://www.mdpi.com/3505302

背景
 炎症性腸疾患(IBD)は世界的に患者数が増加し、腸管炎症の制御が重要な社会的課題となっています。これまで、食品由来の天然素材による炎症抑制や腸内環境改善効果についての研究は行われてきましたが、動物実験とヒト臨床試験を直接つなぐ投与設計や、複合タンパク質素材の体内動態解析は十分に行われていませんでした。東京農工大卵殻膜研究チームを率いてきた跡見順子客員教授(研究当時)のグループは、すでにヒト呼吸機能の改善とブレオマイシン肺線維症モデルで動物モデルとヒトのあいだのギャップを埋める研究、卵殻膜のトリチウムラベルの手法を報告してきました。

研究体制
 本研究は、跡見順子客員教授を大学側研究チーム代表とし、中国竞彩网大学院工学府応用化学専攻 清水美穂客員准教授(帝京大学先端総合研究機構特任准教授)、博士前期課程学生(当時)の菅井航氏、藤田恵理特任研究員(現 帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科講師)、博士後期課程学生(当時)の跡見綾氏および畠山 望氏、同工学部有機材料化学科学生(当時)保田 俊介氏、同保健センター原田賢治准教授(当時)、同大学大学院工学研究院応用化学部門 渡邊敏行教授および、跡見順子客員教授(現 帝京大学先端総合研究機構特任教授)、東京大学アイソトープ総合センター 野川憲夫客員研究員、京都大学複合原子力科学研究所 髙宮幸一教授、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野 浅野善英教授、帝京科学大学、杏林大学、株式会社アルマードとの共同研究として実施されました。本研究の一部は、科研費基盤C(20K11620; 代表:清水美穂)および京都大学複合原子力科学研究所共同利用研究(代表:跡見順子)のサポートを受けて実施されました。

研究成果
〇 プロテオミクス解析により、卵殻膜の主要成分としてリゾチームを同定。
〇 IBDモデルマウスでは、卵殻膜全体だけでなくリゾチーム単独投与でも炎症改善効果を確認。
〇 体重あたりの同一単回投与量でマウス実験とヒト試験を比較し、両者で共通して腸内環境改善効果を観察。
〇 ?H標識による薬物動態解析により、700種類以上のタンパク質からなる複合素材でも簡便に体内分布を解析可能であることを実証。

今後の展開
 本研究成果は、卵殻膜を用いた新規機能性食品(注1)や医療補助食品の開発に発展する可能性があります。今後は、炎症性腸疾患患者を対象とした臨床試験や、長期投与による安全性?持続性の検証を進めるとともに、経口摂取により全身の組織に分布することが判明したことから、超高齢社会及び宇宙環境における老化の促進及び不活動による線維化促進や癌移行の予防に、紫外線や乾燥?感染といったストレス環境から鶏の雛を育み生命を守る卵殻膜の有効利用が期待されます。

用語解説
注1)機能性食品
健康の維持や疾病予防を目的として開発される食品。臨床研究や科学的根拠に基づき、体内での作用機序や安全性の裏付けを持つことが求められる。

図1:本研究の概要

 

◆研究に関する問い合わせ◆
 中国竞彩网大学院工学研究院
 工学研究院応用化学部門 教授
  渡邊 敏行(わたなべ としゆき)
   TEL/FAX:042-388-7289
   E-mail:toshi(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

◆報道に関する問い合わせ◆
 中国竞彩网 総務課広報室
   Tel:042-367-5930
   E-mail:koho2(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

 帝京大学 広報課
   TEL:03-3964-4162
   E-mail:kouhou(ここに@を入れてください)teikyo-u.ac.jp

 東京大学 アイソトープ総合センター 庶務係
   TEL:03-5841-2881
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 京都大学 広報室国際広報班
   TEL:075-753-5729
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 東北大学 大学院医学系研究科?医学部広報室
   TEL:022-717-8032
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 株式会社アルマード
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